ノスタルジーな魅力 - 読感 -『往復書簡』湊かなえ
今日はこの本。
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往復書簡 (幻冬舎文庫) (2012/08/02) 湊 かなえ 商品詳細を見る |
Amazonの内容紹介
高校教師の敦史は、小学校時代の恩師の依頼で、彼女のかつての教え子6人に会いに行く。6人と先生は20年前の不幸な事故で繋がっていた。それぞれの空白を手紙で報告する敦史だったが、6人目となかなか会うことができない(「20年後の宿題」)。過去の「事件」の真相が、手紙のやりとりで明かされる。感動と驚きに満ちた、書簡形式の連作ミステリ。
この本は母が珍しく貸してくれた本というのもあり別に興味のある本ではなかったのだが、せっかくだしと昨日から読み出して分かったのは小説はストーリーだから読みやすいんだなってこと。
書簡自体が長文ではないのでそれを追っていけばどんどん先に進んでいく。
しかも昨年に読んだ小説『天地明察』に比べると同時代で日常のことばかりで綴られていくので前提の知識なども必要がない。
これを普段本を読まない親が読んで「面白かったよ。」と貸してくれたのが分かった。
テレビ番組などで「アンタテレビ見ないの?あの〇〇ってドラマ面白いよ!」と言われる感じと一緒だ。
大抵は「ふーん」「じゃあ今度見てみるよ」って言って見ないパターンが多い。
この本は落ちのあるストーリー小説なので内容は詳しく書かないけど、基本的には多人数との手紙のやりとりで過去の事件の真相が暴かれていくという。
真相が暴かれていくうちに過去互いが実は相手のことをどう思っていたかなど当時の心理描写が手紙に書かれていて徐々に分かっていく感じだ。
普段メールやSNSの短文でやりとりしている人にはこの本に書かれている手紙の文化が意外に珍しく感じるのではないのだろうか。
僕自身も拝啓や前略から友人や知人に手紙を書いて人に送った経験はない。
自分がこの小説のような手紙が送られてきたら、どう返信しようか考えながら読んだりしてノスタルジーに浸りながら没入して読むのがこの本の楽しみ方かもしれない。
人の手紙が羅列してあるのを盗み見するような感じでスルッと小説の世界に入っていけるので、大抵の人は2〜3時間程度もあれば読めるだろう。
しかし、「本を読むならこれも面白いよ。」とこの本を返す時に僕のオススメの本を親に貸しても読んでくれないだろうなと、そんな気はする。
★★★☆☆
たったこれだけ? - 読感 -『面白い本』成毛眞
面白いにもホドがある! 書評サイトHONZの代表が太鼓判を押す、選りすぐりの面白本100冊。ハードな科学書から、シュールな脱力本まで。いずれ劣らぬ粒ぞろい。一冊でも読んだら最後、全冊読まずにいられなくなる。本代がかかって仕方がない、メイワク千万な究極ブックガイド。
冒頭は著者の本に対する考えや歴史が展開される。
百科事典は自分が知りたいことも知りたくないことも並列して載っていてそれを読むのが意味もなく楽しかった。
そんな子供が大人になるにつれノンフィクションに興味を移していく。
こんな始まりなのだがこの本とにかく目次から面白いのだ。
目次も面白いというのは良書の法則かもしれない。
- 真面目にオーパーツ
- 現在日本民俗学
- 国家という悪魔
- 破天荒過ぎて学べない
- 脱力しすぎて学べない
- 天才すぎて学べない
- 不都合なヒトと合理的な生き物
- 地球の真実
- 読ませる医学
- 数学と工学のドラマ
- トイレット•ライブラリーのススメ
- 電車の中で読んではいけない
- 子どもといっしょに読む絵本
5.嘘のノンフィクション
- ウソか?マコトか?
- ウソとマコトの実話
- 手に負えない人たち
- 突き抜けた人生
7.金と仕事とものづくり
- さまざまな仕事
- 経済というアート
- 運命に翻弄される人たち
- 命からがら
本著は箸休めまでを含めて非常にテンポが良い。
本書で紹介した本の冊数は100冊である。すべて購入すると約20万円になる。これを高いと思うか安いと思うか。その判断は読者の皆さんにおまかせしよう。
とあるが、それを判断するには読むしかないのだが、日本の書籍の値段は世界と比較すると安いというという事実は押さえておきたい。
とりあえず大河内直彦氏の『チェンジングブルー』を購入した。
★★★★☆
恐怖と美しさ- 映画 -「ライフ・オブ・パイ / トラと漂流した227日」
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評価:★★★★★
この映画はベンガルトラのリチャードパーカーと漂流して1人生き残る少年パイの心の変化を描くとても美しい映画である。
※以下ネタバレも少々含むので注意
前半は動物園を経営する家に生まれたパイの人格形成の描写に結構な時間を割いている。
インドの絵本を読み聞かせるシーン(口の中に宇宙が見えた)とか、こんなに意味不明な展開の物語を幼い少年にしてるのかと衝撃を覚えるし、父親との会話にはいちいち示唆に飛んでいて文学的だ。
例えば、何にでも疑問を持ちヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教を信じるパイはベンガルトラの目を見て心が通じ合えると餌をやりに檻の近くまで入っていく。
それを父親に発見され目の前で生きた動物が虎に食われるシーンを見せられ父親から「お前は虎の心が見えたのではない。虎の目の中に自分の心を見たのだ。」と言われ目を覚ます。
それでもパイは生きがいを探しつづける。
インドからカナダへ移住する際に乗っていた日本の貨物船は沈没して家族全員を失ってしまう。
そこから奇妙なことに脱出用の小船にシマウマとハイエナとオランウータンを乗せて動物一行と漂流するパイ。
「そんなことあるかよ。」と軽く観客に突っ込みを入れさせた所で、小舟に隠れていたベンガルトラのリチャードパーカーが飛び出してきて、小舟にはリチャードパーカーとパイだけになってしまう。一気に緊張感が走る。
この後、パイは自然の残酷さに恐怖しながらも生き残る為にあの手この手で生き抜いていく。
続きは是非映画館で。
難しいことを抜きにしてもVFXを駆使した動物や自然の映像美だけでも十分に観る価値はあると思う。
そこに宗教、文学テイストを散りばめながらパイの一喜一憂にハラハラしながら、その世界観にグイグイ引っ張り込んでいかれた。
別れのシーンで虎がパイのことを振り返らずにジャングルに戻っていく所がハイライトであろう。
少年は人々に発見されるが泣きじゃくる。それは生き延びた喜びの涙ではなかった...。
「あそこは何を伝えたかったのだろう」と観終った後も考えさせられる。
この映画は、ただ1人の少年が『生きる』だけの映画である。
ただその『生きる』ことが、どれだけの恐怖で美しくて無慈悲かを伝えようとしている。
映画はパイの回想を聞いたカナダ人小説家がこの話を小説にしようという所で終るのだが、この小説のタイトルを「Life Of Pi 〜Your Story〜」というサブタイトルで是非読んでみたい。
Even monkeys can go 【映画】宇宙兄弟
【宇宙飛行士って超エリート!?】
まず配役に小栗旬が適任かどうかは置いておいて、見ていて拭いきれない違和感。
それは宇宙飛行士についてである。
これは原作の漫画を読んでいてもそう感じることなので映画には直接関係ないのかもしれないが、 この映画を見ていて大多数が思うであろうものはJaxaの宇宙飛行士になるのには超人的な能力が必要だということ。
これは作者の完全なプロパガンダである。憧れとでもいうか。
なぜなら宇宙に最初にいったのは猿である。
且つ宇宙に最初に言った日本人は元TBS社員の秋山豊寛さんである。
秋山さんは毛利さんがアメリカ製のスペースシャトルで宇宙に行く前にロシア製のソユーズで宇宙にいっている。 これは事実上、日本の宇宙史の黒歴史である。
ソユーズなどのロケットの中のコンピュータは今で言う任天堂のWii程度の性能しか無いレガシー技術だ。
ロケットはエンジンと素材が重要なのだが長くなるのでその話は割愛する。
つまり、飛行機のパイロットも空の上ではほぼ何もしていないのと同じように、宇宙飛行士もそのような実態なのである。
【あれ映画の話は?】
で今更なんだが、はっきり映画自体はかなり面白い。
最初南波 六太役は大泉洋が良いと思っていた。小栗旬だとかっこ良過ぎると言うかね。
ストーリーは2時間程度の中に詰め込んだ感はあるので、後半展開速いなぁと思ったが全体的には誰にでも楽しめるようになっていると思う。
何より宇宙というテーマが期待と想像を膨らましてくれる。
夢もあるし、情報技術、エネルギー技術、医療技術の色々な分野の発展に今後よりかかせないものになるで成長産業になっていくのは目に見えている。
その点タイミングは世界的には遅いが、遅すぎるわけでもなく日本的にはちょうど良い感じだ。
しかも宇宙に行くという手段がかっこ良い宇宙飛行士になりたいという目的になるという副産物までついてくる。
なので将来有望な子供達に「将来はソーシャルゲーム産業に入ってコンプガチャを作りたい。」などと言わせるよりも(ハイ誰も言いませんね。)ずっと有意義な気がする。
日本に停滞感が漂う中このような形で人々に宇宙について興味を持ってもらうのは素晴らしいことだと思う。
やはり夢を持つことは大切だなと思える映画であった。
P.S. エンディングテーマのColdplayのEvery Teardrop Is a Waterfallも良い。
【TV】『激論!ド~する?!日本“漂流”政治』
【熟議の限界】 昨日録画してあった朝まで生テレビをみた。
テーマは日本漂流政治についてだった。
今さらな話が多い中で救いは上杉隆と荻上チキが出ていたことぐらい。
年金問題の超党派の議論が必要だとか、消費税上げるかどうかなどの議論が未だにされていることにあきれる。
特に消費税に絡む経済問題について共産党や社民党の人なんかはグローバル社会の情勢を全く理解出来てないようであった。
重要なのは何をいつまでにやる必要があるという当事者意識をもった決定だ。
「みんなで合意したから私のせいじゃない。」という過剰コンセンサスがスピード感に欠け誰も責任をとらないという自体を生む。
「昔こうだったああだったとかはどうでも良い。政党は今どうするべきかの差分だけを提示しあうべきだ。」 のような趣旨を言った荻上氏の問題提起は鋭く、あのどうしようもない議論を先に進めた。ここから空気が変わったのは印象的だった。意外に話がまとまったりしていた。
で普通はここからが行政の仕事。 話し合いがまとまったら、実行しないといけない。 しかしここが決定的に欠けている。 話し合いだけが政治ではない。
しかしこの空気がゆっくり進む感じは小泉さんみたいに過剰なぐらいにやらないと、実行出来ないのかもしれない。
「実行出来る政治が必要だ」とは橋下徹氏の言葉だけど、今正に必要なのはそれである。
もう一つ良かったのが上杉隆氏お得意の記者クラブ問題から原口元総務大臣が出ていたこともあって面白い展開になった。
帯域の電波オークション、クロスオーナーシップ、空域についてなどははっきりいって地上波のTVで議論されているのは見たこともなく真剣だった。
改革を口にした原口さんの所には野党よりも寧ろ民主党内部から「時期尚早だ!」と強烈に批判されたそうである。
しかし田中角栄の頃からあるこれら第四の利権も改革が遠そうだのう。